私は急いで、階段を駆け上がり、「ワン、ツー、ワン、ツー」とかけ声が聞こえる屋上の扉が前にある壁にノックした。


「おーい、賀来くん、いる?」


壁に耳を当てると、バタンと壁が開いて、私は前のめりにつんのめった。


「いてててて……」


床に打ち付けた頬をさすりながら、身体を起こすと、机についていた賀来くんが「おお、いずみん! どうしたんスか?」と言った。


「ねえ、賀来くん。キミトトクラブって知ってる?」


「キミトトクラブ?」と賀来くんは持っていたペンを置いた。


「ああ、知ってるっスよ。映像部のことっスね」


「映像部?」


「そうっス。部室は確か、西棟の3階にある資料室っスよ」


「そう! ありがとう!」


私は賀来くんに礼を言って、部屋を出た。


「文芸部復帰も少しは考えてくださいっスよ」


という声を背中で聞きながら、私は「やなこった」と思った。


あんな文芸部にはもう二度と戻りたくない。