再テストの結果は50点満点だった。
昼休み、問題を出してくれた重松茂には本当に感謝しかない。
さて、次はバイトだ。急がなければ。
そう廊下を早歩きで歩いて、階段を降りていると、下の階の踊り場に、片手で文庫本を読んでいる三島志麻とばったり出くわした。
「お前、今日時間ある?」
高めだけど、程よく苦味が混じったような、カフェオレのような声。この声も私は好きだった。
そんな好きなカフェオレが耳から入ってきて、私の身体をくすぐる。
「ある……けど」
本当はバイトがある。でも、私はもう三島志麻しか見えていなかった。
「なら、5分後、キミトトクラブの部室で」
そう言って、三島志麻は階段を上がってきた。
三度、すれ違うその瞬間に、三島志麻の匂いがして、私はまたノスタルジックな気持ちで満たされた。