クラスの男子が全員、元カレだった件





学校でもやっぱり私は三島志麻ばかり見ていた。


河野浩介や広田博は、ロッカーに座りながら5、6人で話している。


重松茂は、日直らしく、黒板消しをしていて、高橋隆人は青山碧と「昔あったスウィーティーのガムって、今どこに売ってるんだろうね」って話で盛り上がっていた。


そんな騒がしくも、どこか落ち着いている教室の隅で、三島志麻は一人、本を読んでいた。


昨日、工場の休憩室で読んでいた本と少し違う。分厚い単行本だった。


今話しかけようか。


一瞬そう思って椅子から腰を上げたけど、すぐに過去のことがよぎって、私は席に着いた。


「え、何? 和泉。おなら?」


と青山碧が言った。それを聞いて高橋隆人もニヤニヤ笑う。


腰を浮かしただけで、おならと勘違いするバカに、私は反論するのもバカバカしくなって、机に頬杖つきながら、三島志麻と付き合う前のことを一人、思い出していた。