そう言って工場長が浮かべた寂しそうな表情に、私は見覚えがあった。
面接の時と同じ表情だ。
「病気だったんだ。手術もできない状態でね。僕にはどうすることもできなかった」
私はいたたまれない気持ちになって、またコーヒーを飲んだ。
「小さい頃から病気がちでほとんど学校には通えなかった。瀬花にも一応入学はできたんだけど、結局1日も通えなくてね」
工場長が娘さんの話をしていると、何だか自分が一日一日を無駄に過ごしているような気持ちになった。
「ああ、ごめんね。キミを見てると、どうしても娘を思い出しちゃって」
「いえ、そんな」
「でも勘違いしないでくれよ? 僕は嬉しいんだ。元気いっぱいなキミを見てると、なんだか娘が元気になって帰ってきたように思えてきてね」
「その、似てますか? 私と、祭ちゃん」
「似てるね。祭もキミみたいに元気いっぱいの子だった。いや、もしかするとキミよりも元気いっぱいだったかもしれないね」
「わ、私だって負けてませんよ! ほら!」
と言って、私は残りのコーヒーを飲みほした。
「いやいや、祭の方がもっと元気だったよ。病人に負けてるようじゃ、まだまだだね」
「それは心外ですね。じゃあ、明日からはもっと元気に働きますね!」



