私は広田博の太い腕を引っ張って、無理矢理連れ出した。
屋上からの階段を降りる途中、私は気になったことを広田博に聞いてみた。
「あの手紙、本当に博くんが書いたの?」
「いや、あれは実は、河野くんに相談したのお。そしたら河野くん『脅迫状みたいに手紙書いて入れておけばいいよ。その方が返してもらえる確率上がるから』って言って」
なるほど。それで、私が手紙を見つけるのを昇降口で待ってて、私とお茶をする口実を作り、あわよくば恩を着せるように仕向けたのか。河野浩介らしい。
とりあえず、河野浩介は高橋隆人にでも頼んでぶっ飛ばしてもらうことにしよう。
「それにしても」と広田博は腕を引っ張られながら言った。
「あのネックレス、まだ持っててくれたんだねえ。ひろしくん、嬉しいよ」
「そりゃそうだよ」
私はあのネックレスが気に入らなくて使わなかったんじゃない。
広田博が家族のために汗水流して稼いだお金で買ってくれたプレゼントを、大切にしていただけだったんだ。
別れた後も、あれだけは大事にしようと決めた。
だから、箱に綺麗に仕舞っていた。