「……」
全然諦めようとしなかった。
そのまた次の日も…。
彼はいつもと同じようにやってきた。
「友達になろう！！」
その日はあまりよく聞こえなかった。
また…調子わるくなったのか…。
そう思っていた時だった。
「あ…！」
彼は何かに気づき手を動かした。
私はその手元を見た。
右手の親指以外の4本の指の指先を、左胸、右胸の順にあてた。
その動作を見て私は目を見開いた。
彼のその動作は…「大丈夫？」という意味だ。
彼は私が聞き取れなかったと思ったのだ。
私は思わず…。
右手の親指以外の4本の指の指先を、左胸、右胸の順にあて、両手の人差し指を横に伸ばして向かい合わせ、交互に回した。
これは「手話できるの？」という意味だ。
さっきの彼がやっていた動作は手話というものだ。
手話とは、手話動作と非手話動作を同時に使う視覚言語で、音声言語と並ぶ言語。
手話は、聞こえない人やろう者の親を持つ聴者であるコーダ等が中心となって使われている。
簡単に言うと…耳や口の不自由な人が手を用いて表現する伝え方だ。