校長室に少女が訪ねてきた。
美しい白髪の少女は、グレーの毛の立派な猫を抱えていた。猫カレンダーの写真モデルになれそうな、整った顔立ちをしている。
「おお、なんとかうまく行ったみたいだな」
「うん。あのね、ライナルトが」言って、シルフィは朝目覚めたら見事な猫になっていた彼を視線で示す。「校長先生にこれを渡してくれって」
「なんだ?」
それは、一通の手紙だった。「一身上の都合により退職させていただきます」……と、書かれている。
校長は「そうか、律儀なやつだ」と大口を開けて笑った。グレーの猫は、にゃーん、と控えめに鳴いた。おそらく、すみませんと言っているはずだ。
「……ショックで学校を休むやつとか出ないといいけどな」
校長はライナルトの熱狂的なファンの女子たちのことが少し心配になった。
「というか猫夫婦。お前たち、これからどうやって生きていくつもりなんだ?」
いきなり夫婦と呼ばれて嬉しそうなシルフィの腕の中で、ライナルトは目を見開くと、深く頭を垂れた。なるほど、考えていなかったらしい、と校長は推察した。
「教師一人分の穴埋めもしないといけないことだし、そうだな……」
校長が難しそうな顔をしていたのは、しかし数分程度のことだった。
「うん、まあなんとかなるだろう」



