夜、ジオはライナルトを廊下に呼び出すと、自販機で買ったアップルジュースをほいっと投げた。
「あ、ありがとうございます」
とライナルトは慌ててキャッチしながら、へえ、アップルジュースなんだ、という意外の感に打たれた。
「あの、話というのは」
ジオが自分のジュースを開けるパキッという音が、人気のない廊下に響く。ライナルトは何やら寒気がした。ライナルトはジオが少し苦手だった。何考えてるか分かんなくて怖いからだ。
しかし、何考えてるか分かんないなこいつ、と思っているのはジオも同じだ。だからジオは、端的に自分の用件を伝えた。
「あのさ。うちのイリヤに迷惑かけるのやめてくれる?」
ライナルトはアップルジュースで激しく咽せた。ジオは即座にティッシュを差し出しながら、「おたくの猫のことで悩んでるみたいなんだよね。人間になるとかならないとか。分かってると思うけど、イリヤは大事な時期だから、おたくの問題はおたくで処理してほしいわけ」とねちっこい保護者の詰め寄り方をしてくる。
はあ……と、ライナルトは生返事をして、もらったティッシュで口を拭いた。この人優しいんだか嫌味なんだかよくわからない、話す前より怖い、と思いながら。



