「その子を人間にしたいの? ふーん……」
イリヤはシルフィを連れて、ジオに相談することにした。昼休みの食堂で、ジオはハンバーグセットを食べている。
「その、時計塔の話っていうのが嘘くさいよね。僕、そんなの聞いたことないけど」
ジオはすっぱりと否定した。
しかしである。この手のオカルト話は、友達同士の会話を通じて知ることが多い。つまり友達のいないジオはーーとイリヤは考えたが、あえて口にはしなかった。それも生き方だからだ。ですよね。
「まあいいや……。で、ライナルトは君が人間になることを承諾しているのかな」
「承諾?」
「そう。ライナルトは、君が猫だからペットとして可愛がっているわけだよね。その猫が急に人間になったら、あいつは困ると思うんだけど」
「シルフィが人間になったら、迷惑ってこと?」
「そういう可能性も考えられるでしょ」
シルフィは傷ついた顔をした。いきなりそんな言い方しなくても、とイリヤがたしなめる。
「だから、可能性だってば。もし、もしだよ。その噂っていうのが本当で、人間になれたとして、そのあと厄介払いされたらその方が大変なんじゃないの」
人間になって、それから「要らない」と言われたら。
シルフィは居場所を失ってしまうことになる。
てっきり喜んでもらえるとばかり想像していたが、ジオの言う通り、そうとも限らないのかも知れない。
「シルフィちゃん、どうする? ライナルト先生に確かめてみる?」
シルフィは少し迷った様子だったが、やがて、「うん」と答えた。



