魔術師と下僕

 
 時計塔。

 この学校の敷地内にある、文字通り時計のついた塔だ。
 レンによれば、この学校の時計塔には強い力を持つ魔術師の魂が眠っているらしい。

 その魔術師は死の間際、地中に埋まるよりも高いところにいたいと望み、墓を作らなかったらしい。

 彼が亡くなったのは夏至の日。

 夏至の夜、時計塔より高いところにいた誰かのうち一人の願いを、その魔術師の魂は叶えてくれるのだという。


「それ、本当ですか?」と、イリヤ。
「さあな。オレも、がきんちょが噂してたのを聞いただけだ」とレンは言う。
「でも、たしかにあの時計塔には魔術師の魂が宿っているーーという話は聞いたことがありますよ。いかにも薄気味悪いから、誰かが面白半分でそんな話を作ったんだろうと思ってましたが」

 夏至っていつでしたっけ、とナターリアが問い、明後日だよ、とヒルデは答える。奇妙にタイミングが良い。そんな上手い話があるものだろうかーーとイリヤは悩んだ。が、当事者であるシルフィはすっかり乗り気だ。


「時計塔より高いところって、どこ!?」


 時計塔から観測できる範囲で、時計塔より高いところ……とみんなは考えてみたが、それより高い建造物は近くにはなさそうだ。


「じゃあ、いっそ飛んじゃいます?」とナターリアが冗談のつもりで言った言葉が、シルフィをさらに乗り気にさせる。

「人間ってどうやったら飛べるの!?」


 シルフィを飛ばす方法。レンを含めた四人は、すっかり考え込んでしまった。