十七歳にもなれば、青春真っ盛りーーかと思いきや、そんなこともなかった。

 イリヤたち実習班は変わらず仲良しだったが、彼らの青春は基本リモートでやりとりし、ときどき集まって勉強会という名のおしゃべり会をする、といういたってローテンションなものだったからだ。

 いつの間にかしれっと付き合い出していたヒルデとヴィットリオはともかく、照れ屋なブルーノと超鈍感なナターリアの仲はかなしいほど進展せず。

 そしてイリヤは、ジオへの想いをずっと胸に仕舞ったままでいる。


「そのままでいいの?」とヒルデに問われたとき、イリヤは微笑んで、「うん、何も言わないでいるのが、一番幸せだと思うから」と答えた。

 洗濯物を取り込むとき、こっそりジオのシャツのにおいを嗅ぐのがイリヤは好きだった。あらあら変態チックだこと、とヒルデは思ったものである。

 かくして、大きく変わることなく穏やかな日常を過ごしていた面々だった。

 が、ある日。

 魔術学校に、ちょっとした事件が起きた。