それははなから自分をジオの相手になりうる存在には勘定していない、という口調だった。

 単なる遠慮なのか、それとも家族としての「好き」なのか、ナターリアにもヒルデにもわからなくなったし、実のところ当のイリヤの中でもはっきりしているわけではない。

 ただ、あのジオが……イリヤ命、の匂いをぷんぷんさせていた男が、今さら女を作るかついては、ナターリアには大いに疑問なのだが。


 それから間もなく、ヴィットリオとブルーノが到着した。


「賭けてもいいけどお前ら全然勉強してないだろ」


 とヴィットリオが言う。


「勉強会で勉強する人っているんすか?」


 ナターリアはすっとぼける。
 こうして実際に顔を合わせるのは久しぶりなのだが、テレビ通話やチャットをしていたので五人の中に久しぶり、という感覚は薄い。

 ささ、座って座って、とナターリアは男子二人のために椅子を用意する。


「お二人はどうですか? 恋とかしてますか?」


 ヴィットリオは急だな、と呆れながらも「してなくはないけど今のところ脈なし」と答える。そのさらりとした口調がなんとも大人びていて、女子三人はどよめいた。

 対して、


「ばばばばかやろう! へんなこと聞くなよ!」


 とブルーノは明らかに動揺した。舌回ってないっすよ、とナターリアがからかい混じりに言う。