「蛇じゃなくてトカゲです」
「他には?」
「ありません! さすが先生。自分より鼻が利く人に初めて会いました!」


 ナターリアはジオに握手を求めたが、ジオはわざとらしく腕を組んだ。もちろん、拒絶の意思表示だ。


「じゃあねイリヤ。僕はこっちだから」


 と、ジオは職員室側の方向を顎で示した。


「その変な女が変なことしてきたら言って。トカゲの餌にしてやるから」

 
 イリヤははいと言うわけにもいかず、はあ……と曖昧に言葉を濁す。ナターリアは「生徒相手に物騒ですな」と、相変わらず悪童みたいに笑っていた。


「で」


 くるりと、ナターリアはイリヤの方を向いた。


「本当のところ、お二人の関係ってなんなんです?」
「えっと……」


 答えなくてもいいものを、イリヤは真面目に考えてしまう。結果正直に「主従関係ですね」と答えたところ。ナターリアは、いかにも意外だという風に「ふーん?」と語尾を疑問系にする。


「主従といいますと……恋愛感情を伴う方面の?」