ナターリアはどうぞよろしく、と勢いよくお辞儀をした。


「よろしくじゃないんだよ。つきまといの理由はなんなわけ?」


 と、ジオは相手が下手に出ても追及する構えだ。ナターリアはその迫力に怯むでもなく、「つきまといとまで言わんでも」とやはり笑った。


「お二人からまーったく同じ匂いがしまして」

 イリヤは思わずジオの顔色を窺ったが、ジオは至って平然としている。

「なにそれ。だから何。たまたまでしょう」

「それが不思議なんですよ……。匂いからして血縁関係は無いか、あったとしても限りなく他人に近い親戚ってところですが、同じ植物の匂いがしますし、少なくとも数年は同じ食事で暮らしておいでかと思われます」


 ナターリアは立板に水といった調子で述べた。声も出せずに驚くイリヤをよそに、ジオは大きくため息をついた。


「ちょっとばかし鼻が利くからって人のプライベートに探り入れて面白い? 大体、他人が親代わりやっててなんかおかしいわけ?」


 ジオはイリヤを背中に隠し、ナターリアを追い詰めるようににじり寄る。そして、すん、と空気の匂いを嗅いだ。


「両親と祖父母四人、兄が二人に弟が一人、それから赤ちゃんが一人。赤ちゃん以外の誰かが文房具屋に勤めてるね。犬が一匹と鳥が一羽、あとは蛇もいるか、あるいは蛇皮の小物を使ってる。それからそのシャンプーは値段の割に粗悪品だからもう買わない方がいいよ。以上、事実と異なる点は?」