魔術師と下僕


「じゃあ、人を幸せな気持ちにする魔法が使えるようになりたいからーーというのはどうでしょう」
「なるほどね、それっぽくなってきた」


 人を幸せになどと口から出まかせだったのだが、その割には前からそう考えていたような、妙にしっくりくる感じがイリヤにはした。

 それから用意していたカボチャ三つに魔法をかけて、三つとも大きくすることに成功した。食卓に、しばらくカボチャ料理が並んだ。

 そして。


「合格おめでとう、イリヤ。どうせ受かると思ってたから全然心配してなかったけどね」


 発表の前日ほとんど眠れず顔色がいつもよりさらに顔色が悪いジオが言った。


「ありがとうございます」
「合格祝い何がいい? カボチャ?」
「カボチャはもう一生分食べた気がします……」
「だよね……」


 二人は黄色が嫌いになりかけた日々を思い出して遠い目をした。


「そう言うと思ったから、通学鞄にしておいた」


 紺色の綺麗な鞄だ。登校日用に使うものである。側面に赤いものがぶら下がっている。


「これって……」
「欲しがってたでしょ。巨大ロブスターのマスコット」
「あ、ありがとうございます!」


 なんでロブスターなのか大いに疑問だけど、喜んでくれたなら満足だよーーとジオは思いながら、何かを諦めた人間に特有の儚げな微笑を浮かべた。