魔術師と下僕


「今朝は何時に起きましたか?」


 面接想定問答集!とでかいゴシック体で書かれた表紙の本を片手に、ジオが問いかける。


「えーっと……確か、7時です」
「『えーっと』って言わない」
「すみません……。でもあの、起きた時間なんて訊いてどうするんでしょうか……」
「『面接官が相手の緊張をほぐすための雑談的意味合いを持つ質問です。また、相手の言葉の意味を取り違えることなく簡潔に答えられるかを見ています』……だってさ」

 ジオは本の内容を読み上げた。


「ほえー」
「ほえーとしか言いようがない感じだよね。僕なら意味わかんないから力でねじ伏せて合格って言わせるかな」


 と、ジオは自分の手を眺めながら言う。冗談なのか本気なのかわからず、この人怖いな、とイリヤは苦笑した。


「回答例は、『はい。7時に起床いたしました など』だって」
「ほえー」


 じゃ次の質問、とジオは続ける。


「この学校へ入学を志望する理由を教えてください」
「えーっと、家族の勧めです……」
「正直でよろしい。いや、よろしくはないけど」


 嘘というか建前を教えるのが、ジオには苦痛だった。本当はずっと正直でいてほしいが、これも先々のことを考えれば仕方ないのか。