イリヤにとっては突然のことだが、ジオはもうずいぶん前からイリヤをどこか学校に入れてやるつもりだった。勉強は前述のとおり、加えて栄養バランスの取れた食事と適度な運動が功を奏してあんなに小さかった身体は平均並に成長した。


 一緒にラジオ体操した甲斐があったなあ、とジオはひとり噛み締める。ジオは運動が憎しみを覚えるほど大嫌いだが、これもイリヤのため、自分も歯を食いしばってなら続けられそうなラジオ体操を選択したのだ。


 今なら学校で学び始めても置いてけぼりを食うことはないだろう。もちろんものすごく心配だが、イリヤならできると信じていた。


 ただひとつーー美的センスが独特な方向に育ったことが気掛かりではあるものの。


 ジオはイリヤの部屋の壁に飾られた、素晴らしい技術で描かれたキモいとカワイイの配分が7:3くらいの割合の絵を思い出して、胃がキュッとなった。目覚まし草に「チコ」と名前をつけて可愛がっているのが判明した時に、なにか手を打っておくべきだったかも知れない。


 とまあ山あり谷ありといった調子だが、なにはともあれ、準備は整ったのだ。