ジオが突然、試験を受けてもらう、と言い出した。


「試験って、なんの試験ですか?」


 十二歳になったイリヤは、少しだけくだけた口調で尋ねる。


「ひとつは同年代の子と比べてどれくらい学力があるかの試験」


 こちらも、二年経って少しは態度が柔らかくなったジオが答える。

 幸いにして、イリヤは本に対する苦手意識がほとんど無かった。ジオも暇さえあればイリヤの勉強を手助けしていた。そのためジオは、今となってはイリヤの学力は平均ちょい下、ぐらいのところまで来ているんじゃないか、という手応えを感じている。

 一方イリヤは、「ひとつは」という言葉に引っかかりを感じた。テストが複数あるなんて、喜ばしい状況とは言えない。


「もうひとつは……魔術学校の通信課程に入る試験」
「魔術学校の……?」

 
 ジオの細長い白アスパラみたいなひとさし指と顔とを見比べて、イリヤは小首を傾げた。