悪寒に耐えていると、数秒後、ジオの腹の辺りにずしっと重みが来て、


「ご主人様……?」


 自分がなんとか正解のカエルを引き当てたということがわかった。
 強張っていた全身から一気に力が抜けた。


「はー……。カエルじゃなくて良かった」

 ジオは心底ほっとしたという風にため息をつく。
 イリヤに買い与えた中に混じっていたカエルの絵本。

 あれは、子供用の物語本ではなく、超初歩的な魔術が誰にでも分かりやすく図解されているーーというものだった。イリヤは誤って、カエルに変身する魔術を発動させてしまったのだ。

 疲労困憊の極みといった様子の主人を見て、イリヤは「すみません……」と恐縮する。

「本当だよ!」と、安心したジオは思わず大きな声を出した。
「でも、とりあえずお前が無事で良かった。僕はカエルが大っ嫌いだから、見つけるまですごく大変だったんだよ。もう、勘弁してよね」

 イリヤはますます恐縮して、蚊の鳴くような声で「はい」と答えた。

 カエルとキスなんて二度としたくないからねーーというセリフまでは、ジオは言わずに留める。