イリヤがタミヤにことの次第を話すあいだ、実習班の面々も興味津々に聞いていた。

「じゃあ、イリヤちゃんが前に言ってたマリアさんって」と、ヒルデ。
「うん。わたし……だったみたい」

 正直なところ何が起きたのか自分でもうまく咀嚼仕切れていないなりに、イリヤは言った。

「失ったはずの想い人は、実はずっと近くにいたってわけっすか。なんかロマンチックっすね! せーんせ!」

 ナターリアはししし、と笑う。

「やめろ、茶化すな」

 冷たく言うジオの頬に、ほんのりと赤みがさしていた。

「壮大だ」とブルーノ。
「なんかよく分かんないけど泣けてきた」とヴィットリオ。
「あ? 結局どういうことだ? もっと分かりやすく言えよ」とレン。

 ふと、タミヤが思い出したように言った。

「そうそう。ジオルタが探していた本、見つけておいたのよ」

 少し待っていてね、とタミヤが持ち出してきのはーー【豆電球の掟】という題の絵本だった。
 ジオはそれを見て、はっとした表情になる。懐かしいものが現れた、そんな楽しい感慨ではなく。
 イリヤには、どこか悲しそうに見えた。

「これ、あなたにあげようかと思っていたの。良かったら持っていって」
「……ありがとうございます」

 その薄暗い表紙の本を、ジオはしばらくの間、じっと見つめていた。