魔術師と下僕


 その後、【手】は度々姿を現すようになった。その都度炎を使うのは危険が伴うため、ジオは対処の方法を研究しさまざまノートに書きつけていった。

 最も有効だったのは、ねずみの侵入を防ぐ術の応用だ。魔術の網を使って壁の穴などを覆うというものだが、これを巨大化して、家全体を包む。

 この方法で【手】は一時的に敷地に入って来なくなった。

 しかし、巨大化した術ではどうしても強度に問題があり、やがて【手】は網に穴を開けてそこから入って来るようになった。

 そもそも、【手】は、どのような理由で生じさせているものなのか。ジオはいくつか仮説を立てた。

 一つ、戦争の名残り。
 ずいぶん昔に魔術戦争をしていた頃の術の痕跡が異常な事態を引き起こした事例が、各地で報告されている。誰かが仕掛けたが発動しなかった不発弾のようなものだったり、細かな魔術が集合して、思いがけず新たな術として発現したものだったりする。ともかく珍しい現象で、生きている間に遭遇することはほとんど無い。宝くじの一等に当たるより珍しいかも知れない。

 一つ、誰かに攻撃されている。
 他人の恨みを買うようなことをしてきたつもりはない。だが、知らないうちに恨まれていることは生きていればままある。たとえば妬み嫉みの恐ろしさは、タミヤの近くにいて薄々感じてきた。一応心当たりがあるとすれば一人だけ。しかし彼は魔術師の弟子でありながら魔術を使いこなせない。

 一つ、攻撃ではない。


「おつかれさま」