作業は家の中だけに止まらない。
庭の草むしりをしながら、イリヤはお茶にできそうな植物がそこそこ生えていることに気がついた。本物の「前の住人」がどんな人だったかは知らないが、その人も魔術師だったのだろうか。魔術師はやや街場から離れた場所を好んで住む傾向があるーーと、ジオが以前言っていたような気がする。
「わたし、お茶淹れますよ」
イリヤの提案が食い気味だったので、なんなんだこのひとはと思いながらもジオは止められなかった。羽交締めにしてでも止めるべきだったというような惨状が、キッチンに繰り広げられた。
「仕事増やさないでください」
ジオは静かに怒り、これにはイリヤも平謝りしながら、異臭で充満したキッチンをせっせと換気した。
ジオはどこかでラベルシールを買ってきて、それをイリヤに与えた。
「これがあなたの仕事です」
「はあ」
「下僕のように働くって言いましたよね」
本の分類シールを作れ、とジオは言うのだった。たしかに、部屋が異臭騒ぎになるよりはマシだろう。いつのまにここまで準備したものか、ご丁寧に独自の分類表まで作られている。おおむねこの通りに、と言いおいて、ジオは自分の作業をすすめた。



