家の中は箱だらけでそれなりにごちゃごちゃしていた。小さなジオは引っ越してきたばかりのようだ。
当たり前のことながら中の雰囲気はまったく違うが、住み慣れたジオの家だ。これにもやはりイリヤはほっとする。前の住人という設定だから、どこがどうなっているかをすっかり知っていても怪しまれないのも好都合。
「忘れ物ってなんなんですか?」
と思いきや、架空の忘れ物を探すイリヤの要領の悪さをジオはすぐに見抜いて、背後から刺々しい声で質問を浴びせてくる。
まずい。「えーっと」何も思いつかなかった。
仕方なく、イリヤは別の作戦に出た。
「ごめんなさい、嘘です」
素直に謝る。
「はぁ?」
意味がわからないとばかりに眉間の皺を深くするジオ。急に謎の嘘をつかれたら混乱するのも当たり前だ。イリヤはなんとか考えを巡らせる。
「あの、本当は忘れ物じゃなくて」イリヤは必死になって言葉を振り絞った。
「ちょっとした手違いで引っ越し先がまだ用意できてなかったんです。なので、今家がないんです。すみません。助けてください。しばらくここに置いてください」
よくもこんな嘘を思いつくものだ、とイリヤは自分でショックを受けた。口が勝手に動いているみたいだ。人間は嘘をつくとき早口になるというのは本当らしい。
しかし、言ってしまってからこんな提案ジオが受け入れるはずもない、とイリヤは思った。今でさえこんなに不審なものを見る目で見られているのに、同じ家にジオが自分を滞在させるわけがない。
「そうですか。別に構いませんよ」
「ですよね……すみません」
断られたつもりで謝ってしまったイリヤは、断られていないことに気がついてやや仰け反ってしまった。
「ん? あれ? いいんですか……?」
「内容がなんであれお困りなのは見ればわかりますから」



