タミヤは懐かしい顔を、玄関に迎え入れた。


「久しぶり。元気……」


 だったかしら、と言おうとして、異様な雰囲気に息を呑む。

 ここまで走ってきたのだろう、髪から汗を滴らせた彼は、挨拶をするでもなく、切羽詰まった表情で「先生」と言った。

 そういえば、一緒に来るはずだった女の子の姿がない。

 タミヤは表情を曇らせ、彼の背中を撫でた。


「入って、ジオルタ。まずはお茶にしましょう」


 タミヤの家は、ジオルタやレンブラントがいた頃とほとんど変わらない。タミヤはジオルタを椅子に座らせた。

 澄んだ緑色のお茶を、タミヤは「心が落ち着くわ。ゆっくり飲みなさい」と言って差し出す。ジオルタはタミヤに背中をさすられながら、ゆっくりとそれに口をつけた。


「ありがとうございます」

「話せそう?」


 ジオルタはこくりと頷いた。


「イリヤが」ジオルタは喉をつまらせた。「イリヤが、いなくなって」

「なぜ?」


 ジオルタはつっかえながら、タミヤの墓地であったことを師に伝えた。