どれだけ魔術を学んでも、自分の心はどうにもできなかった。それでも、どうにかする方法をまだ見つけていないだけなのだと、ジオはにらんでいる。


「どうしたんですか、怖い顔して」


 それはお互いさまでしょう、とジオは答えた。イリヤはイリヤでこのところむっつりと真顔でいる時間が長くなっている。口数も減っていた。言いたいことがある分だけ。

 あいつは何をやっているんだーーと、実習班の面々、とりわけヒルデの怒りようは凄まじかった。彼女からジオあてに、拳の絵文字がたった一つだけのメールが届いたほどだ。

 学校に行ったら袋叩きにあうに違いないと考えたジオは、次の対面授業の期間に備えてさまざまな魔術ーーたとえば肉体を強化するもの、相手の動きを遅くするもの、自分の身代わりになってくれるものーーなどを仕込んでいた。

 実際に待っていたのはほとんどが物理攻撃ではなく冷ややかな視線だったが。

 その唯一の物理攻撃、シルフィに引っ掻かれた顔の傷は、ジオの鋭い人相をさらに鋭くした。冷戦状態にあるイリヤも、「大丈夫ですか!?」と素で心配したほどだ。