ブルーノは仕切り直しというように姿勢を正した。「というわけで」と始まった告白は、全然照れを捨て切れていない。「オレはナターリアが好きなんだ」

 そこで留めておけばまだ格好もついたのだが、ブルーノは慌てて、「いやお前がそうじゃないなら申し訳ないから忘れてくれ、あいや忘れられたら困るんだけれどもダメならダメでスパッと諦めるから本当に重荷に思わないで欲しいというかなんというか」とぐだぐだぼそぼそ付け加えた。

 そのぐだぐだの言葉に被せるようにナターリアは「いや全然好きじゃないとかないですしむしろ好きっていうか、ただ私のようなかわいさゼロの者で本当にいいのか心配なのでどうか決断を焦らず、できれば持ち帰って慎重にご検討いただきたいと」などと言い出したので、両者互いの言葉が聴こえておらず終いには「えっ?」「えっ?」と訊き返す羽目になった。まったくお話にならない。


「だーもう! 頭おかしくなりそうだわ! 付き合うかどうかだけはっきりしようぜ!」
「そ、そうっすね! じゃあ、よろしくお願いします」
「マジか? ほんとにいいのか? 無理してないか!?」
「え!? やっぱりやめた方がいいっすか!?」
「待て待て待て待てやめるな、オレたちは恋人だ、はいうれしい! はいバンザイ!」
「ば、ばんざーい」


 なんで観覧車のなかでバンザイしてるんだっけ、とブルーノは思った。しかし、これまでの長い長い片想いを思えば、ただ、満足だった。

 帰り道、二人は相当ぎこちない雰囲気になっていた。心は浮かれているが、どこまではしゃいでいいのかわからず、逆にシュッとした顔つきになったりしていた。


「あの」
「おう! なんだ」
「ブルーノさんって、結局私のどこが良かったんすか……?」


 勇気を出して、おそるおそるという感じの訊き方に、ブルーノはぎこちなく笑みを浮かべて、しかし迷わずに言った。


「一緒にいると楽しいとこ」


 二人は少しだけ手を繋いで歩いた。
 が、やはり照れ臭くて、すぐに離してしまった。