「ほーん。じゃ二周目行きますか」
「やだよ、もっといろんなやつに乗りたいだろ」
「んなこと言って、ほんとは怖いんじゃないっすか?」
「よしわかった」


 ブルーノは自分が招いてしまった事態の重大さに後悔が止まらない。


「その前に、一旦休憩しよう」


 ベンチに腰掛けたが、ブルーノは精神を統一しており雑談が弾むこともない。「ブルーノさん、もし悲鳴あげたらアイス奢ってもらいますからね」「お安いご用だ」と、よく分かっていないのに適当に返事をしたがために謎の約束まで取り付けられてしまった。完全に追い詰められている。

 二周目も、ブルーノは悲鳴を上げなかった。どうだ、オレの勝ちだ、あれ? オレ勝ったのか? と、激しい上下運動のためかますます思考が回らない。

 ナターリアはますます不満げに、頬を膨らませている。なんだかわいい顔をするじゃないか、と呑気に思う余裕も、ブルーノにはないのだが。


「コーヒーカッ」
「三周目」

 ブルーノの提案は光の速さで却下される。

「……やってやるよ」


 逆にもう悲鳴を上げた方が楽なのかも知れないが、三周目もブルーノは声を上げなかった。写真におさまった表情は、「無」そのものであった。

 ナターリアはますますふくれたが、「アイスぐらい奢ってやるから……」という一言で「マジすか」とすぐさまご機嫌になった。かくして四周目は免れた。