マジカルラビットランドの案内板を見ながら、ブルーノはナターリアに訊ねた。


「なにに乗る?」
「うさぎが見たいっす!」
「おっ、最初からそこ行くか」


 ふれあい広場は本物のうさぎたちに餌をあげることができる癒しのコーナーである。週末ともなれば動物が大好きな子供たち、社会に疲れた大人たちでいっぱいだ。

 ナターリアは「うさぎのにおい、香ばしいっす」と喜び、ブルーノに「独特な楽しみ方だな」と突っ込まれた。そんなブルーノはうさぎの咀嚼音に耳を澄ませていたのだが。

 ひとしきりうさぎと触れ合って満足したナターリアは「じゃあ次は絶叫系で」とにこやかに言った。


「マジか」ブルーノは青ざめる。「いやマジか」


 覚悟はしていたのだ。もしもナターリアがジェットコースターに乗ると言い出したら自分も乗るしかない、と。

 実はブルーノは火だけではなく、大抵の人がスリルと呼ぶものも大抵怖いのである。

 だが、オレ怖いんだよね、などと言ったらどうなるか。結果は明白。ナターリアは「え? ブルーノさん絶叫系ダメなんですか? マジウケますね、みんなに教えよう」とかやりだすに決まっている。

 つくづく自分が情けない、とブルーノはため息をついた。しかし、ここはやるしかない。