sceneNo.4

〈ヘアーサロン リンドフィールド〉

お客様の背中に深々と頭を下げて見送る。

静かに扉を閉めた私はその声にハッとして顔を上げた。

「ねぇ。ハルちゃん、今から飲み行く?」

全然…普段と変わらない流青君の声。

なのに、彼の声は私にだけ囁いてくれてる…そんな風に耳元で甘い。

それくらい…心地の良い響きがある。

私にだけ…な〜んて、もちろん

気のせい…なんだけど。


「えっ…。いいんですか?」

「オーナーも一緒に…飲みに出ようと思ってて。」

流青君は、シザーケースを華奢な腰から外して軽く微笑んだ。

「行きますっ。はいっ!!」

私が〝はい〟より先に〝行きます〟と答える
声を掻き消すように…心亜ちゃんの返事が被さってくる。

「ええーーーー♡私もっ。私も行きたいですぅ〜♡」

持ち手の長いホウキを両手で握りしめて、バックヤードから心亜ちゃんがひょっこり顔を出す。