scene No.2

〈ヘアーサロン リンドフィールド〉

オーナーの愛犬、ゴールデンレトリバーのソウル君は窓から差し込む日の光に目を細めてあくびをする。
自然に霞んだウォールナットの床に前足を揃えて…

こんなに穏やかな午前だというのに…私の心は穏やかではない。

「セット、練習できた?」

流青君がワゴンに愛用のカットシザーズ、セニングを一列に並べながらサラッと私に尋ねる。

サラッと過ぎて…流青君の背中にしか返事ができなかった私は朝の涙の後遺症だろうか…小さな声すら詰まらせる。

「全然です。…迷惑すぎる同居人のせいで、全く手につきませんでしたっ!」

やる気になんてならないです。

なんて…言い訳なんだろうな…。

「(笑)何?それは…もしかして、朱雀のことを言ってる?」

「間違い無いです。」