「じゃねっ。」

「うん。いってらっしゃいっ。」

スゥは、私のために玄関の扉を開ける。

そして、差し込む朝の光に大きな伸びをして…スウェットパンツのポケットに両手を突っ込む。

恋人同士の2人なら…

ここで…チューなんかしたりして。

私は軽く手を振るスゥを、振り返らないようにして階段を降りた。

しかも…心持ち、早足。

だって、もし…振り返ってしまったら…

きっと、愛おしく感じるから…感じてしまうから。

穏やかな朝を振り切るように…今日も、私は逃げるように出勤する。