2人なら…「推しと彼氏と彼女の関係」

scene No.4

〈D.Dオーディションファイナル日本武道館〉

「ハルさ〜ん、こっちこっち。」
「心ちゃん、ごめんっ。遅くなっちゃって…」
私は鼻先で手を合わす。
アリーナ席入口に、研修生メンバー1人1人の巨大パネルがズラリと並ぶそこは豪華なフォトスポットになっていた。
先に来ていた心ちゃんはスゥのパネルの前に並んで、丁度…順番の先頭に差し掛かっていた。
まだ胸のドキドキが鎮まらない。
鎮まる訳がない…
私は病院で貰ったエコー写真を鞄の底に仕舞うと、何事も無かったかのような顔を一生懸命に作ってみせる。
「ハルさん、遅いですって。でも間に合って良かった、忙しいのに呼び出してすみません。」
「す…すごい列…まだ昼前だよ。開演、夕方なのに…」
私は息を切らす。
「やっぱり朱雀君の列…すごいですよね。
チケットーーーー欲しかったぁ。倍率高かったもんなぁ〜でもでも…ここで写真は撮りたいですよぉ〜。
そういう子たちばっかです!!笑」
「へぇ〜。」
私はの後方を振り向いて関心した。
「私、もう既に推しです♡朱雀君のっ!」
心ちゃんがはにかんで笑う。
「うん…笑 スゥ、喜ぶと思う。」
「きゃーーーーカッコいいっ!」そう言って心ちゃんはスゥのパネルの前で両手を広げた。
投げキッスポーズにハートポーズ…はしゃぐ心ちゃんと…スマホを向ける私をハーフスノーグレーのカラコンのスゥが潤んだ瞳で見つめて来る。
熱っぽい視線はため息が出るくらい美しい。
スゥが遠く感じる…スゥは皆んなの朱雀なんだ…この長蛇の列を目の当たりにすると急にスンと腑に落ちた。
確信する。
スゥの人気は確信するしかない。
「ハルさん、笑って下さいよぉ〜映えませんってば。」
無意識のありきたりなVサインにハッとして…そうだ、せめて笑わないとスゥのカッコ良さに飲まれてしまう…
「まあまあ…いい感じです笑」
私は苦笑しつつ次の順番の方に会釈してフォトスポットを譲り心ちゃんに駆け寄った。