リュウを見送った私はトイレに引き篭もる。
私は2度目の妊娠検査キットの箱を開ける。
「俺、グランプリしかいらないから。」
〝行って来ます〟の後、リュウの声は少し震えて…私のためのグランプリしかいらない…そう言ってくれた。
リュウは狭い玄関の扉からスーツケースを半分出して、振り返る。
私の頬に手をかざして…耳たぶにそっと触れて…
キスしようと唇を近づける。
頭がぼーとして、目を閉じることにワンテンポ遅れる私に首を傾けたままクスッと笑って身体を起こした。
「お預けにしとく…(笑)」
「……リュウ?」
「グランプリしかいらないから…。そしたら、ハルにちゃんと言える気がするから…」
言葉を返せなかった。
2度目。
妊娠を示す赤い縦線を見て疼くまる。
何日かしたら…結果は変わるかもしれない…そんなバカな事を考えた自分は人として最低。
こんなに大好きなのに…私はリュウの事を裏切った。
彼を1番傷付ける形で…
私は大切な人を裏切っている。
「大丈夫。リュウなら絶対、1番だよ…っ」
私を抱きしめるリュウの腕に力がこもる。
神様はどうしてこんなに意地悪をするんだろう…。
リュウにも私にも。
リュウの肩越しに、スゥを想う…
…どうしよう。スゥ…どうしたらいい?
「穴あけてやったんだからっ!」
奈々美ちゃんの声が頭の中で絡まる。
スゥの赤ちゃん…
神様はどうしてこんなに意地悪をするんだろう。



