路地裏の下り坂。

調子が出てきたボロチャリは、スゥが楽しそうに笑うたびに加速して…私の上半身だけを振り落としてしまうのではないかと思うくらい夏の夜を突き破る。

「イヤっほぉーーーーっ!!」

スゥは天を仰いで、両足をペダルから外す。

「きゃーっ!スゥっ!!怖いってばっ!」

風の抵抗で空気が無くなる。

私は床に放り投げられた金魚のように口をパクパクさせて空気を探す。

スゥのTシャツに風が侵入して私の頬をバタバタと刺激するたび……

私はスゥを抱きしめる。

愛着半分…憎しみ半分。


あの日。

あの夜。

2年前の…夏も終わりかけたあの日。


たくさんの雨に…打たれ続けた窓ガラスは外界から2人を遮断した。