〝リュウ…待って、置いてかないで!〟

私の声にならない心の叫びが届いてしまったのか、リュウは振り返って私に右手を差し出した。

はっと…現実に引き戻される。

「大丈夫?足元、気をつけて…。」

「う…うん。平気……」

私はその手を借りずに、いつ辿り着くとも分からない古い山道を歩き続けた。

通称 タンク山。

この地域の公共施設の貯水タンクが置かれている場所は、小学校の裏手より続く山道へ入る。
古くて細いアスファルトの坂道を登り、中腹の開けた場所にそれは建っていた。

私は黙ってリュウの背中について行く。

大音量で蝉たちが泣いているというのに、自分の吐く息だけがやたらと耳につく。

緑と木々の間から木漏れ日が真っ直ぐに伸びて…足元のアスファルトからはヒビの部分から雑草たちが顔を出していた。

ここが数年前のリュウとスゥそしてアキちゃん。
3人の遊び場…。