誕生日やイベント事になると、アキちゃんの髪を結ってくれていた…という、きっとその人だ。

リュウが、カラン…とベルの鳴る扉を開けるとお客さんのナイロンケープを外しながら…白髪のおかっぱ頭の小柄な年配女性が顔を上げた。

「いらっしゃいま…せ。」

彼女は視線をリュウに向けたまま…ケープを鏡台に置くと、驚いた顔でこちらに歩み寄ってきた。

「こんにちは。お久しぶりです…おばちゃん。」

「あんら……まぁ。リュウちゃん?リュウちゃんやないの…久しぶりやわぁ。」

まぁ…嬉しい!

どうしたの。嬉しいわぁ…!!

アキちゃんのおばぁちゃんは喜びを抑えきれない様子で嬉しいを連呼する。

まるでリュウが眩し過ぎて、目が開けられないような仕草をして、同時に夢を見ているような表情のまま私の方にも顔を向けた。

「あら…あら…可愛いお嬢さんも。」

職業柄、人を褒めることに慣れてはいるのだろうけれど…そう言って微笑む大先輩のスタイリストに私は初対面から温かいものを感じた。