…君がいた街…
scene No.3

氷見漁港の市場から旧国道に沿って進むと、古い漁港の町に民家が並んでいた。

とある集落の入口でタクシーを降りると、リュウは慣れた様子で細い路地を歩きだした。

道なりなのか?角なのか?はっきりしない昔ながらの田舎の坂道を5分ほど登って行くと、ふっと視界が開けて…眼下に先程の漁港が広がった。

古びたガードレール越しに海を見下ろして…反対の山側に視線を移すとそこには民家に隣接された小さな美容室があった。

昭和の匂いが残る美容室。

入口には、メランポジウムやペチュニアなど夏の定番の鉢植えがお行儀よく並べられていて、〝パーマ. 着付け 美容室 タートル〟
と描かれた看板があった。

キャスター付きのその看板は潮風に晒されて縁が錆で変色しているものの、長年大切に使われてきたのが分かる。

そして店主が年配であることも容易に想像できた。

アキちゃんのおばぁちゃんの店だ。