「あ…いいや。また今度。」

何…?

「あぁ…うん。わかった…また今度。」

気になる……。

心取り残されたまま…私は彼の言葉を反復した。


〝今日は、一緒に眠って…〟

おあずけ……だね。

期待外れの小さな失望。

けれど、ホッと安堵する自分にも気づく。


好きな人と繋がりたい反面…私の心は揺れている。

リュウに抱かれることが怖いんじゃない。

自分の中のこの葛藤を白黒させるのが怖い…。

何か大切な関係が壊れてしまうような気がするから…?

答えを…絞りたくない。

リュウのことがこんなに好きなのに…潜在意識レベルで逡巡する自分がいる。

「次…全国大会だね。」

「うん…なんか、ここまで来たら負けたくないって思うねっ。」

「うん。リュウならできるっ!」

「俺、これだけは…負けたくない…。」

「うん…。」

なんだか…このタイミングでリュウのひたむきな姿に泣けてくる。

泣いてる私に気付いていないリュウは少し笑って…

「本当に…遅くなるから先に眠って。」

「うん…。おやすみ、リュウ。」

「おやすみ。」

私はもう一度、リュウを労うと目の前のモヤモヤを振り払うようにスマホを伏せた。