…君のいた街…
scene No.1

その日の夕方、リュウから連絡が入った。
リビングのローテーブルに伏せてあったスマホに飛びつく。

通話ボタンの前に一呼吸。

YouTubeの生配信で結果を見ることもできたが…何だか緊張してそこだけ見られなかった。

繊細な技術と類い稀ないセンスを競うコンテストは…私にとって同じ職業でありながらも別世界のことのように感覚が遠い。

ミリ単位でのカットやカラーリングは人間の髪というより芸術の領域なのだ。

リュウが努力しているのを知っているからこそ、全国でも激戦区の関東ブロックに画像が切り替わるたびに自分のことのように緊張してしまうのだ。

結果は…リュウの口から聞こう。

動画を見ることをやめても心拍数が上がる一方だった。

「配信みてた?」

「見てた…リュウとモデルの男の子、めちゃくちゃ映ってたよ。
でも…結果は見てないの。」

「何でっ(笑)」

スマホ越しにリュウがひゃひゃっと笑う。