「い…いただきます。」と言ってオレンジジュースの缶を手のひらで転がす私に、奈々美ちゃんはコーラで喉を鳴らしながら、一歩…二歩と近寄って来た。

「ふ〜ん。朱雀はこういう感じの人がタイプなんだね。」

一応…職業柄、身だしなみはそこそこに考えるけれど特別に個性が強いわけではない私。

スゥのタイプかは…分からない。

奈々美ちゃんは挑戦的な目で、私の頭の先から足のつま先までを舐めるように見る。

私は羽毛だらけになった…あの日の感覚に背筋がゾッとした。

ダ…ダメだ…どんなに平静を装っても怯えと罪悪感が顔に出てしまう。

「…ぷっ…!くくっ。大丈夫…。もう、死のうなんて思わないから。」
奈々美ちゃんはそう言って、空になったペットボトルをゴミ箱に投げ入れた。

そして荷造りの続きに手を動かしながら言った。

「生まれ変わった気持ちでいるのっ。一回死んだと思って…。
朱雀に…男に好かれようとして自分を抑えるのはもうお終い。
ファッションだって…煙草だって、好きなようにやるの。
私は私らしく…。」

「奈々美ちゃん…。」