〝アキ〟

……アキって…誰?

女は感情的な生き物というけれど…この瞬間、私はやっぱり女だ。

「俺は…嫉妬なんていう自分の感情で、朱雀を責められない。
朱雀も、きっと…その感情を誰にもさらけることは無いと思う。」

私は黙ってリュウの横顔を見つめる。

込み上げてくる…名前の無い感情に頭が真っ白になった。

「僕らが恋したアキは…天使だった。」


〝僕らが恋した天使。〟



「おはようございま〜ふぅ。」

不意に裏口の戸が開いて心亜ちゃんが顔を出した。

私とリュウは、同じタイミングでそっちに首を向ける。

あくび混じりで戸を開けた彼女は、私たち2人のいつもと違う空気にあくびを途中で飲み込んだ。

「あ…れ?どうかしました……?」