どっ…ドキーーーーっ!!

なっ!なんで…こっちに振るっ!!

マダムの悪気の無いピュアをセクハラとも言う……。

渋谷店の同僚がそう言って年配のお客さんをなじってたけど…コレか…?

私が、「どうなんですかね(笑)」と返事をする声に被せて、リュウは「よしっ。」とお客さんから顔を上げた。

肩にのった細かな髪を優しく払って、「ブローお願いします。」とすれ違い様に私に声を掛ける。

そして忙しそうにレジ傍のPCを覗き込んだ。

オーナーが出張で留守の日のリュウは、一人で髪を切って傍らで事務仕事も颯爽とこなしていく。

いつもの仕事。

いつもの風景…なのに…

ただ、少し忙しいだけなのだろうと分かりつつも坦々と作業をするリュウに距離を感じる。