…無垢なる炎上…

sceneＮｏ．1

えっ…何？　何で？

楽しい時間からすぐに現実に戻された。

夢のような時間は…本当に夢なのか？とさえ思う。

まさか…

スゥ？

私は簡単に空回りした鍵穴から鍵を引き抜くと…一呼吸置いてから入口の戸を開けた。

鍵が開いている。

出掛ける前に掛けたのを覚えているから…

「スゥ？　帰ってるの…？」

玄関にスゥのスニーカーが無いことから、奥に向かって声を掛けるのではなく…独り言のように呟いてみる。

自分の家なのに異様な気配を感じる。

まるで、他人の家に間違えたのでは…と感じる程の違和感。

自分ではない別の人間が息を吐き出した空間に歪みを感じる。

リビングダイニングへ繋がる廊下の扉は開け放たれ中途半端な位置で止まったまんまになっている。

その先…ここからはよく見えないが…いつもより暗がりが、強く主張しているように感じる。