居酒屋どん兵衛ビル屋上。
「すごーーーーいっ。初めてかも…こんな高い所から東京を見下ろすのはっ!」
小高い丘の上にあるこのテナントビルは8階建てだが、夜景は30階以上から眺めている程の景観が望める。
心亜ちゃんがテラスの柵に走り寄る。
プライベート専用のビアガーデンになっているここは、もちろんオーナーのおねだりで店長さんに特別に解放してもらった。
さすがに…もう緑のトレーナーと黄色い安全帽を被っていない店長さんだけど、やっぱり…見ているだけで締めにカップ麺を食べたくなる、狸フォルムは健在だと思う。
「あそこ…ぼんやり明るいでしょ、あそこが新宿の灯り。その横…一回り小さい灯りが渋谷。あと…ほら、お台場の観覧車…分かるかなぁ〜。」
どん兵衛さんが得意そうにビールのジョッキを運んで説明してくれた。
もぉ…誰?またジョッキで頼んだ人…。
私は、テラスの手すりに両腕を重ねて…片方の頬を乗っける。
「ふぅーーーー。」
都会の灯りはまるでキラキラ散らばった光の砂のよう。
細かくて小さくて…
儚いように見えて、その下では灯りの数だけ人々が蠢いている。



