カイルは少し意地悪気な笑みを浮かべながら、強く頷いた。

「それなら、もう本当に……」

 ここにいられる。私にとって何にも代えがたい幸せがここにあった。

 諦めなくても良かったんだ。まだ、ううん。また、ここにいられる。

 そんな安心感が広がっていった。

「ほらまた、そんなに泣くと干からびてしまうよ」

「これはうれし涙だから、いいの。リーリエも泣いてるし」

 私はちゃんと幸せだ。こんなにも、こんなにも、大切な人に囲まれて。

 もっと早く二人に助けを求めていたら、もっと違っていたのかな。

 違うな。そうしていたら、私はきっと二人に負い目をずっと感じてしまっていたもの。

 方法は少し間違えてしまったけど、でも起こした行動は間違ったとは思えない。

 むしろ二人の本当の気持ちを知ることが出来たのだから。

「ティアの分だけじゃ足りないだろうから、一緒に泣いてあげるのよ」

「ありがとう、カイル様、リーリエ。私、本当に二人が大好き。二人が側にいてくれて本当に良かった。本当に、本当に……」

「馬鹿ね。それはわたしたちもよ? 大好きよティア」

「ああ。もちろんだよ、ティア。君を、心から愛してる」

「カイル様……」

「あーあ―あー、そういう惚気は、二人の時にやって下さいな」

「ご、ごめん。リーリエ」

「ふふふ。嘘よ、馬鹿ね。わたしはそんな二人のやり取りを見てるのが、ホントに好きなのよ」

「なにそれ、リーリエったら、もぅ」

 私たちは、泣きながら笑いだす。

 悪役になると決めた、あの日の涙とは全然違う温かな涙は、ただ心を満たしていった。