「僕たちはティアにお仕置きをしようと思ってね。君がちゃんと助けを求められるように、辛い時は辛いと、悲しい時は悲しいと、僕たちを頼ってもらえるように」

 そう言いながら、まるで子どもを諭すように、カイルが背中を撫でる。

 その手はとても温かく、心地よい。

 ぐちゃぐちゃだった感情も、どうしようもない気持ちもその手が吸い込んでくれるような気がした。

 私が一番、なによりも欲しかったぬくもり。

 もう二度と、求めてはいけない、触れてはもらえないと思っていたのに。

 それがこんなにも簡単に……たった一つ、頼って救いを求めるだけでよかっただなんて。

 ただカイルを守るのに必死で、そんなコトも私は分からなくなっていたんだね。

「私、本当は苦しくて……助けてもらいたくて……でも、私、カイルを守りたくて。リーリエにひどいことして、でも二人が大好きで……」

「ティア、あなた……」

「ホントは苦しかったの。どうしていいか……分からずに……。でも、頼ったら迷惑がかかるって。それにあんなこと、言えるわけないって……」

「言えばよかったのよ。どれだけでも、あなたの力になってあげたのに」

「リーリエ……うん、そうだね。ごめん……私……ほんとに二人が……」

「うん、うん。知ってるよ、ティア。僕もリーリエも君が大好きさ。だから言ったろ? 君の悪行に付き合うのは、もううんざりだと。あまりに頼ってくれないから、ヤキモキしてしまってね」

「そうよ。カイルと手を組んで、悪い子にはお仕置きをするコトにしたんだから」

「僕たちはティアが望む、断罪のお芝居をしていたんだよ。君が満足するように。その上で、君がもう一度、僕たちを頼りたくなるように。もう大丈夫だよ、ティア。もうこれでおしまいだ」

「……もう大丈夫? もう、いいの? 私はまた、ここにいてもいいの? 二人の側に……」

 こんなコトをしたのに……。叔父たちがお父様たちを殺害したというのに。

 それでもまだ、私はここにいてもいいの?

 本当に側にいても迷惑がかからないの?

 でも違う。たとえ迷惑だったとしても、私はココにいたい。

 二人の側にいたい。もう二度と、一人は嫌だ。

「ああ。君の叔父さんたちには、代わりにご退場いただくことにしたよ」