紳士な御曹司の淫らなキス~契約妻なのに夫が完璧すぎて困っています

 こうしてわたしは緑川さんの半歩後ろをついて歩いた。平日のお昼前なので、行きかう人の姿はまばらだった。

 室善に到着すると店内には様々な皮製品が置かれていた。どれも普通のお店よりワンランク高めのものばかりだ。奥のガラスケースにはお財布などの小物が並んでいる。緑川さんが手で示した。


「こちらの名刺入れはどうですか? 人気がありますよ」


ガラスケースに並ぶ、しっとりとした皮製品に乙女心がくすぐられる。


「わあ、素敵」

「この名刺入れはブライドルレザーで作られています」

「ブライドルレザー?」

「馬具に使われるレザーのことです。大変丈夫なので長くお使いいただけます。それにポケットが二つあるので自分用といただいた名刺を分けていれることができますし……」


緑川さんは封書をサイドテーブルの上に置くと手袋をして、ガラスケースの中から慎重に名刺入れを取り出した。

 そして名刺入れを開き、中身の部分を見せてくれた。


「このように深いまちが付いているので二十枚ほどの名刺を入れておくことができます」


 わたしは上のほうにある財布を指さした。


「これは?」

「こちらのロングウォレットは小さな格子状の型押しが人気のリージェントブライドルレザーで作られています」


 緑川さんは長財布を取りあげて中を見せてくれた。


「札室二室、コイン室一室、カード室八室、それとマルチポケットが二つ付いています」

「おいくらなんですか?」

「通常価格で四万八千円になります」

 ちょうど予算ぎりぎりだった。いや、社販で買えるのだから、もっと安くなると思うともう少し頑張ってみたくなる。もうちょっといろいろ見てから決めたかった。