白金の家に向かいながら電車で移動していると、薫さんが訊いた。
「紫さん、疲れたでしょう? 今日は外食にしませんか?」
「はい。もうお腹ぺこぺこです」
薫さんの案内で、創作フレンチのお店に行った。窓際の席に案内され、メニューを眺めていると、背後から声をかけられた。
「あ、樫間さん!」
振り返ると須藤さまが立っていた。
「偶然ですね」
「実はわたし今日は合コンに来ているんですよ」
「がんばってくださいね」
「はい!」
元気に返事をした須藤さまの視線が、わたしの向かい側の席に座った薫さんに向いた。
「え、その人が樫間さん婚約者……?」
須藤さまが驚きに大きく瞳を見開いている。
「……間違っていたらごめんなさい。あなたはもしかして緑川社長の……」
「父をご存じなのですか?」
薫さんの問いに須藤さまが頷く。
「わたしが働いている会社、千海ホールディングスなんです」
「ああ、なるほど。そうでしたか」
「羨ましい。樫間さんの婚約者って素敵な方ですね。でも、樫間さんはいい人だから、そういう人に
選ばれて当然ですよね」
そう寂しげに笑いながら、須藤さまは席に戻っていった。
