紳士な御曹司の淫らなキス~契約妻なのに夫が完璧すぎて困っています

 

 薫さんの自宅は、白金にあった。
 
 買い物をして帰るのかと思いきや、家に材料が置いてあるということだった。言われるままについて行くと、黒光りする大理石の床を歩いて大きなガラス戸の入口に立った。すると薫さんに歩みに合わせてドアが自動で開いた。わたしがぎょっとしていると、「顔認証システムですよ」と言われた。貧乏人にはなかなか敷居の高いマンションだ。薫さんの家は最上階にあるペントハウスだった。玄関まで歩くとまた自動的に扉の鍵が解除される。


「さあ、どうぞ」


「お邪魔します」


 薫さんが玄関の明かりを灯すと、黒で統一された上質な家の香りがした。一体いくらくらいするのだろうと考えると眩暈がする。疑問が顔に出ていたのか、薫さんが言った。


「ここ、大学に進学したときに、祖父に買ってもらったんです」

「……え、すごい!」


 こんな高級マンションを大学進学祝いに買ってあげるなんて、普通では考えられない。場違いすぎておろおろとしていると、奥にある二十畳ほどの広さのリビングに案内された。



「今夜はパスタにしますが、構いませんか?」

「あ、はい」

「じゃあ、適当に座ってテレビでも見ていてください」


 革張りのソファに座ってきょろきょろと周囲を見回した。家具は最低限のものしか置かれていなかった。メゾネットタイプのマンションで、リビングの端に上に続く階段があった。床にはチリひとつ落ちておらず、まるでモデルルームのようだと思った。こういうのを実際に見ると、改めて薫さんは御曹司なんだと実感した。


「できましたよ」


 薫さんは、ソファの前のローテーブルにお皿を置いた。出来上がったのはバジルとミニトマトの冷製パスタだった。色鮮やかなトマトを見ると、急にお腹が空いてきた。


「たいしたものは作れませんでしたが……」


 そう謙遜していたけど、一口食べて、わたしは目を丸くした。


「美味しい」

「それはよかった」

「薫さん、料理するんですね」

「昔から自炊は好きでしたから。料理をするようになったのは大学に入学してからですけど、買って食べるより自分で作ったほうが美味しかったので」