紳士な御曹司の淫らなキス~契約妻なのに夫が完璧すぎて困っています

 わたしは一度、家に帰ると、着替えてから合コンの会場のある横浜駅に向かった。
 
 指定された場所はイタリアンのレストランだった。


「先輩、こっちですよ」

 お店に入ると、小沢さんが手を振った。

 すでにわたし以外のメンバーは集まっているようだった。


「遅くなってごめんね」

「大丈夫です」

 わたしが席に着くと自己紹介から始まった。

 小沢さんの友達はみんな身ぎれいにしていて、品の良さが指先まで漂っていた。やっぱり場違いなのではと後悔したけど、ときすでに遅しである。

 相手の男性四人は、同じ商社に勤務していて、小沢さんが言ったように年齢層は高めに見えたが、そのぶん、浮ついたところがなく落ち着いている。

 やがてお酒と料理が運ばれてきて、場は盛り上がりをみせた。

 わたしの正面にいた痩せぎすで眼鏡をかけた男性が話しかけてきた。


「お仕事は何をしているの?」

「ネイリストです」

「へえ、おしゃれだねぇ」


 なんだろう。男性の物言いに嫌な感じがした。そこで男性が身を乗り出してきた。


「俺、手相見るの得意なんだ。手貸して」

「あ、はあ」


 素直に手を出すと、男性のぬめっとした手の感触にぞっとした。急いで手を引っ込めようとするけど、相手の力が強くて離すことはできなかった。


「あ、きみ生命線、短いね。早死にするよ」

「え?」

「ああ、あと男運も悪そうだね」

「……そんなことまでわかるんですか?」

「でも俺と付き合ったら、長く生きられるし、男運もよくなると思うよ」


 絶句した。こんな見え透いた嘘に引っかかる女性なんているのだろうか。こんな男と付き合って、男運があがるはずもない。


「お断りします。手、放してください」

「いいの? 君、結婚できなくなるよ? 焦ってるからこんな場所に来たんでしょう」

「いいから、放してください!」


 切れ気味に言うと男性はようやく手を放してくれた。男はぶつぶつ独り言を言っている。「だからもてないんだよ」とか「行き遅れるぞ」とか「俺の何が不満なんだよ」とか言っているのが聞こえてきて、背筋が寒くなった。すると小沢さんが席を立ってわたしのところにやってきて、小声で言った。


「先輩、ごめんなさい。変なのの相手をさせちゃって。わたしの正面にいる人が、あの人は癖があるから気をつけたほうがいいよって言ってくれて……」

 わたしは脱力した。


「ちょっとトイレに行ってくる」